決算の見込みが出て、税引前の利益がおよそ3,000万円になりそうだと分かる。顧問税理士からは納税額の概算が届き、その金額の大きさに驚く。

そこで出てくる考えは、たいてい2つだ。役員報酬を上げて会社の利益を減らすか、会社にそのまま残すか。

この記事では、法人の利益3,000万円にどの税金が、どれだけかかるのかを、中小法人の税率・地方税・2026年4月以後開始事業年度から始まった防衛特別法人税まで含めて、仮の計算で分解する。

先に方向を示しておく。仮の条件で計算すると、利益3,000万円の法人にかかる税金は約1,000万円、実効税率はおよそ33%台になる。報酬を上げれば会社の税金は減るが、社長個人の税金と社会保険料が増え、合計の負担はむしろ増える。

ただし、会社に残した約2,000万円も、社長が使うときには別の税金がかかる。見るべきは税率の高低ではなく、残ったお金の行き先である。

この記事が役に立つ方

  • 今期の利益が2,000万〜3,000万円台になり、納税額の大きさに驚いている
  • 中小企業の実効税率や、防衛特別法人税の影響を自社の数字で確かめたい
  • 会社の預金は増えるのに、社長個人のお金が増えていない

利益3,000万円の法人税等は、仮の計算で約1,000万円になる

法人の利益にかかる税金は、国に納める3種類と、地方に納める3種類に分かれる。

仮に、次の条件で計算する。

  • 資本金1億円以下の中小法人で、課税所得(税金の計算上の利益)を3,000万円とする
  • 事業年度は2026年4月1日以後に開始するものとし、防衛特別法人税の対象とする
  • 事務所は1か所で、地方税はすべて標準税率とする
  • 法人住民税の均等割、事業税が翌期に損金になる効果、税額控除は考えない
税金計算の考え方金額(仮)
法人税800万円×15%+2,200万円×23.2%630.4万円
地方法人税法人税額×10.3%64.9万円
防衛特別法人税(法人税額−500万円)×4%5.2万円
法人住民税(法人税割)法人税額×7.0%44.1万円
法人事業税(所得割)400万円×3.5%+400万円×5.3%+2,200万円×7.0%189.2万円
特別法人事業税事業税額×37%70.0万円
合計課税所得に対する割合 約33.5%約1,004万円

※仮の条件による単純計算です。実際の税額は、所在地の税率、均等割、税額控除、前期の事業税の損金算入などにより異なります。

3,000万円の利益に対して、手元から出ていく税金はおよそ1,000万円。会社に残るのは約2,000万円だ。

表のなかで最も大きいのは法人税だが、事業税と特別法人事業税を合わせた約260万円も小さくない。地方税を見落として「法人税率は23.2%だから」と考えると、実際の負担を1割ほど低く見積もることになる。

中小企業の法人税率は「800万円まで15%」、この特例には期限がある

法人税の税率は、原則23.2%だ。資本金1億円以下などの中小法人は、所得のうち年800万円以下の部分が15%に軽減されている(本則は19%)。

この15%は、租税特別措置法による時限の特例である。2026年9月時点では、2027年3月31日までに開始する事業年度が対象とされている。これまでも延長が繰り返されてきたが、延長されるかどうかは毎年の税制改正で決まる。期限後の扱いは、その年の改正内容を確認する必要がある。

あわせて、次の点も押さえておきたい。

  • 2025年4月1日以後に開始する事業年度で、所得が年10億円を超える年は、800万円以下の部分も17%になる
  • 前3事業年度の所得の平均が15億円を超える法人(適用除外事業者)は、800万円以下の部分が19%になる
  • 資本金5億円以上の大法人に100%保有されている子会社などは、資本金1億円以下でも中小法人の特例を使えない

利益3,000万円の会社では、軽減税率が効くのは最初の800万円だけだ。残り2,200万円には23.2%がかかる。利益が大きいほど、軽減税率の影響は相対的に小さくなる。

防衛特別法人税は、利益3,000万円の会社なら年5万円程度にとどまる

2025年3月に成立した改正法で、防衛特別法人税が創設された。2026年4月1日以後に開始する事業年度から適用されている。3月決算の会社なら、2027年3月期が最初の対象になる。

計算は次のとおりだ。

(基準法人税額 − 年500万円)× 4% = 防衛特別法人税

基準法人税額は、所得税額控除などの一部の控除を適用する前の法人税額をいう。中小法人の場合、法人税額が500万円を超えるのは、仮の計算で所得がおよそ2,440万円を超えたあたりからだ。それより利益が小さい会社では、税額は生じない。

利益3,000万円なら、法人税額630.4万円から500万円を引いた130.4万円に4%をかけて、約5.2万円になる。金額は小さいが、税額がゼロでも申告が必要とされている点には注意したい。申告書は法人税の申告書と一体の様式で作成する。

なお、個人の側でも、2027年1月以後に生じる所得について、復興特別所得税が1.1%に下がり、防衛特別所得税1%が加わる。合計の水準はこれまでと同程度で、役員報酬の比較に大きな影響はない。

地方税を足すと、800万円を超える部分の税率は3割台後半になる

「中小企業の実効税率」を調べると、20%台から30%台までさまざまな数字が出てくる。数字が違うのは、利益のどの部分を見ているかが違うからだ。

仮の計算で、課税所得の水準ごとの税負担を並べると次のようになる(前表と同じ条件)。

課税所得税金の合計(仮)課税所得に対する割合
800万円約189万円約23.6%
1,000万円約263万円約26.3%
2,000万円約631万円約31.5%
3,000万円約1,004万円約33.5%

※仮の条件による単純計算です。事業税の損金算入による効果は含めていません。

全体の平均は3割台前半だが、800万円を超える部分に限ると、1円あたりの税負担は約37.7%になる。報酬や経費で利益を100万円動かすとき、効いてくるのはこちらの数字だ。事業税は翌期の損金になるため、実際の負担はこれよりやや下がる。

所在地によっても変わる。たとえば東京都は、資本金1億円以下でも年所得2,500万円を超える法人には、事業税に超過税率を適用している。利益3,000万円の会社が都内にあれば、事業税は仮の計算で十数万円増える。自社の数字は、所在地の税率で確かめたい。

役員報酬を上げると、会社と社長を合わせた負担は増える

法人の税金が約1,000万円なら、報酬を上げて会社の利益を減らせばよい、と考えたくなる。社長個人の税金と社会保険料まで入れて比べてみる。

仮に、役員報酬1,200万円を払った後の利益が3,000万円の会社で、報酬を年1,800万円、2,400万円に上げた場合を比べる。条件は次のとおりとする。

  • 法人側は前の表と同じ条件。報酬の増加分と、会社負担の社会保険料の増加分だけ利益が減る
  • 社会保険料は東京都の協会けんぽ・40歳以上の料率(健康保険・介護保険・子ども・子育て支援金の合計11.70%)と厚生年金18.3%を労使で折半し、2026年9月時点の上限(健康保険139万円、厚生年金65万円)を適用する。等級の端数は無視する
  • 所得税は給与所得控除195万円、2026年分の基礎控除62万円、社会保険料控除だけを引き、復興特別所得税2.1%を含める。住民税は課税所得の10%とする
項目A 報酬1,200万円B 報酬1,800万円C 報酬2,400万円
法人の税金1,004万円768万円547万円
社長の所得税・住民税203万円444万円718万円
社会保険料(労使合計)283万円338万円338万円
税・社会保険料の合計1,490万円1,549万円1,603万円
会社に残るお金(税引後)1,996万円1,605万円1,226万円
社長の手取り855万円1,188万円1,513万円

※仮の条件による単純計算です。実際の税額・保険料は、家族構成、各種控除、等級、所在地などにより異なります。

報酬を1,200万円から2,400万円に上げると、会社の税金は約457万円減る。一方で、社長の所得税・住民税が約515万円、社会保険料が約55万円増える。合計の負担は約113万円増える。

理由は税率の差にある。このケースの社長は、報酬を上げた部分に所得税33〜40%と住民税10%がかかる。会社側で減る税金の割合は約37.7%なので、個人に移したほうが重くなる。

ただし、表の見方はここで終わらない。Aの「会社に残るお金1,996万円」は、まだ社長の手元にはない。

「法人にだけお金が貯まる」状態は、次の税金を先送りしているとも言える

報酬を抑えて会社に利益を残す。これを毎年続けると、会社の預金は増えるが、社長個人の預金は増えない。多くのオーナー企業で見られる状態だ。

会社に残した約2,000万円は、社長が個人で使おうとした時点で、もう一度どこかの出口を通る。たとえば配当で受け取れば、法人税を払った後の利益に、個人の所得税・住民税がかかる。持株割合の高いオーナーの配当は総合課税となり、報酬と合算して累進税率が適用される。

別の出口もある。役員退職金は、退職所得控除と2分の1課税により、同じ金額を報酬で受け取るより課税対象が小さくなりやすい。会社で設備や人に投資すれば、個人に移さないまま事業のために使える。どの出口を使うかによって、表のAがBやCより有利かどうかが変わる。

なお、中小法人は、特定同族会社の留保金課税の対象から外されている。会社に利益を残すこと自体に追加の税金はかからない。その分、残すかどうかの判断は、税率ではなく使い道の予定で決まる。出口ごとの税金の違いは、社長の手取りを「出口」で整理した記事で詳しく扱っている。

また、決算前に「利益を圧縮しましょう」と繰延型の商品を勧められることがある。その場合も、圧縮した利益が戻ってくる年に何の税金がかかるかまで確かめたい。考え方は繰延型の節税商品のデメリットで整理している。

会社に残す約2,000万円には、使い道と出口の予定をつけておく

利益3,000万円の年に確認しておきたい項目を挙げる。どれも、顧問税理士と話す前に社長の側で答えを用意できるものだ。

  1. 来期以降も、同じ水準の利益が続く見込みか。一時的な利益か、続く利益かで、報酬の決め方が変わる
  2. 社長個人が毎年必要とするお金はいくらか。生活費・住宅・教育・投資を分けて書き出す
  3. 会社に残すお金の使い道は何か。運転資金、設備投資、借入の返済、退職金の原資、承継のどれか
  4. 退任や承継の時期の目安はいつか。退職金を出す年がおおよそ見えているか
  5. 事業年度の開始日はいつか。防衛特別法人税の初年度と、軽減税率の期限がどの期に当たるか

2と3に答えが出ると、報酬を上げるべきか、会社に残すべきかの材料がそろう。答えが出ないまま報酬額だけを動かすと、毎年、その年の税額だけで判断することになる。

よくある疑問

Q. 中小企業の法人税の実効税率は、結局何%で考えればいいですか?

利益全体の平均で見るか、800万円を超える部分で見るかで変わります。本記事の仮の条件では、課税所得3,000万円の平均で約33.5%、800万円を超える部分に限ると約37.7%(事業税の損金算入の効果を除く)です。報酬や経費で利益を動かす判断には、後者の数字が参考になります。所在地の税率で試算し直すことをおすすめします。

Q. 法人の利益が3,000万円なら、役員報酬を上げたほうが得ですか?

本記事の仮の計算では、報酬を上げるほど会社と社長を合わせた税・社会保険料の合計は増えました。一方で、会社に残したお金は、配当や退職金などで受け取るときに別の税金がかかります。個人で必要な額、将来の退職金の予定まで含めて、顧問税理士と数年分を試算して比べるのが確実です。

Q. 防衛特別法人税は、中小企業にも関係がありますか?

法人税を納める法人はすべて対象です。ただし、基準法人税額から年500万円を控除して計算するため、中小法人では所得がおよそ2,400万円台を超えるまで税額は生じません(仮の計算)。税額が生じない場合も申告は必要とされています。

税率ではなく、残った約2,000万円の行き先で判断する

利益3,000万円の法人にかかる税金は、仮の計算で約1,000万円。法人税の軽減税率には期限があり、防衛特別法人税も加わった。数字を分解すると、どこにどれだけかかっているかは見えてくる。

そのうえで判断を分けるのは、税引後に残る約2,000万円を、いつ、誰が、どの形で受け取るかだ。報酬で受け取るなら今年の個人の税金が増え、会社に残すなら将来の出口で税金がかかる。

今期の会社に残る予定のお金には、名前がついているだろうか。運転資金なのか、退職金の原資なのか。それが決まっていれば、税額の大きさに振り回されずに済む。