決算まで残り2〜3か月。試算表を見て、思ったより利益が出ていると気づくと、今期のうちに何か手を打ちたくなる。

決算前にできる節税は、実際にある。短期前払費用、決算賞与、少額減価償却資産の特例、未払費用の計上。どれも法令や国税庁の通達に根拠がある。

ただし、どれにも条件がある。条件を外せば損金にならず、架空の計上や期ズレにあたれば、税務調査で否認されるおそれがある。

もう一つ、条件を満たしていても注意したい点がある。100万円を使って減る税金は、税率33%なら33万円だ。残りの67万円は会社から出ていく。その支出が会社に必要でなければ、手残りは減る。

この記事では、決算前にできることの条件と、やってはいけないことを整理する。判断の基準は、今期の利益がいくら減るかではなく、その支出の後に会社にいくら残るかである。

この記事が役に立つ方

  • 決算まで数か月で、今期の利益が予想より多く出そうだ
  • 決算前にできる節税の条件を、顧問税理士に相談する前に整理しておきたい
  • 決算前に保険やリースの提案が届き、ほかの方法と比べたい

決算前の節税は「減る税金」より「残るお金」で選ぶ

仮の数字で確かめる。条件は次のとおりとする。

  • 今期の税引前利益を仮に2,000万円、法人の実効税率を33%とする
  • 決算前に300万円を支出し、全額が今期の損金になるとする
  • 住民税均等割や、来期以降の税率の変化は考えない
決算前の行動今期の税金今期末に残るお金見方
A 何もしない660万円1,340万円―
B 使う予定のない物品に300万円561万円1,139万円201万円減る
C 来期に払う予定だった費用300万円を前払い561万円1,139万円来期の支払いが300万円減る

※仮の条件による単純計算です。Cは前払いした費用が今期の損金になる条件を満たす場合を想定しています。

Bは税金が99万円減る一方、会社に残るお金は201万円減る。Cも今期末の残高はBと同じだが、来期に払うはずだった300万円を前倒しで払っただけなので、会社の負担は増えていない。決算前の支出で見るべきは、その支出がなくても、いずれ払っていたものかどうかだ。

以下の4つの方法も、この基準で見ると使いどころが分かりやすくなる。

短期前払費用は、1年以内の役務を毎期同じ処理にする場合に使える

前払費用は本来、役務の提供を受けた期の費用になる。ただし法人税基本通達2-2-14により、支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係る前払費用を支払い、その額を継続して支払った期の損金に算入している場合は、その処理が認められている。

対象は、一定の契約に基づいて継続的に役務の提供を受けるための費用だ。たとえば、事務所の家賃や保守契約の料金などが考えられる。

注意点は3つある。

  • 継続性:今期だけ年払いにして、翌期に月払いへ戻すような処理は、継続の要件に合わないおそれがある
  • 対象の範囲:商品の購入代金は役務ではない。借入金を預金や有価証券で運用する場合の支払利子のように、収益と対応させる必要があるものも対象外とされている
  • 効果は1回だけ:損金が増えるのは月払いから年払いに切り替えた期だけで、翌期以降は毎年12か月分に戻る

仮に、3月決算の会社が月30万円の事務所家賃を毎月払っていて、今期の3月に翌年度1年分の360万円をまとめて払ったとする。この条件で損金になれば、今期の家賃の損金は、4月〜3月の12か月分360万円に前払いの360万円が加わり、720万円になる。増えるのは切り替えた期の360万円だけで、翌期からは毎年360万円に戻る。減った税金は今期の1回分で、会社から出ていくお金の総額は変わらない。

一度切り替えたら、その処理を続けることになる。来期以降も同じ契約を続ける予定があるかを確認してから検討したい。

決算賞与は、期末までの通知と1か月以内の支払いが条件になる

従業員への決算賞与を、支払いが翌期になっても今期の損金にするには、次の3つをすべて満たす必要がある(法人税法施行令72条の3)。

  1. 支給額を、各人別に、かつ同時期に支給を受けるすべての使用人に通知している
  2. 通知した金額を、通知したすべての使用人に、事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払っている
  3. 通知をした事業年度に、その支給額を損金経理している

国税庁の説明では、支給日に在職している人だけに支給するという扱いにしている場合、その支給額の通知は、ここでいう「通知」に当たらないとされている。期末から支給日までに退職した人にも支払う前提で通知する必要がある。

また、決算賞与の対象は使用人だ。役員への賞与は、事前確定届出給与などの要件を満たさない限り、損金にならない。社長や家族役員に決算前に賞与を出しても、今期の所得は減らない。

決算賞与は従業員の手取りと意欲につながる一方、会社からはお金が出ていき、社会保険料の負担も生じる。業績を従業員に還元する目的があるときに選ぶ方法である。

少額減価償却資産の特例は、2026年4月以後の取得分から40万円未満に広がった

青色申告をしている中小企業者等は、取得価額が一定額未満の減価償却資産を、事業に使い始めた期に全額損金にできる特例がある(租税特別措置法67条の5)。

令和8年度税制改正で、この特例は次のように見直された(所得税法等の一部を改正する法律・令和8年法律第12号)。

  • 対象の資産:2026年4月1日以後に取得等をする資産は、取得価額40万円未満(それより前の取得は30万円未満)
  • 適用期限:3年延長され、2029年(令和11年)3月31日まで
  • 年間の上限:取得価額の合計300万円まで(変更なし)
  • 対象の法人:2026年4月1日以後の取得等について、常時使用する従業員数が400人を超える法人は対象外(改正前は500人超が対象外)

決算前に使う場合の注意点は、期末までに事業の用に供していることだ。注文しただけ、届いただけで使い始めていない資産は、今期の対象にならない。適用を受けるには、損金経理をし、確定申告書に明細書を添付する必要もある。

たとえば、1台38万円のパソコンは、2026年3月までに取得したものは30万円以上なので特例の対象外だったが、2026年4月以後に取得して期末までに使い始めれば対象になる。年300万円の上限は変わらないため、同じ期に何台も買う場合は、合計額が上限を超えないかを確認したい。

ただし、特例で損金になるのは、もともと数年かけて償却する資産の費用を1年目にまとめる部分だ。翌期以降の減価償却費はその分なくなるので、会社全体で見れば、費用を計上する年が前に寄るにすぎない。必要な設備を必要な時期に買う、という判断を変えるほどの効果ではない。

取得価額10万円未満の資産や、20万円未満で一括償却資産(3年で均等に償却)を選んだ資産は、この特例の対象外で、それぞれの制度で処理する。

未払計上できるのは、期末までに債務が確定した費用だけ

期末までに支払っていない費用でも、次の3つをすべて満たせば今期の損金にできる(法人税基本通達2-2-12)。

  1. 期末までに、その費用に係る債務が成立している
  2. 期末までに、その債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生している
  3. 期末までに、その金額を合理的に算定できる

たとえば、期末までに作業が終わっている外注費は、請求書が翌月に届いても未払計上の対象になりうる。反対に、「来期に修繕を頼む予定」の費用は、期末時点で給付の原因となる事実が発生していないため、今期の損金にはならない。

消耗品については、毎期おおむね一定数量を取得し、経常的に消費するものに限り、買った期の損金にする処理を継続することが認められている(同2-2-15)。決算前に大量に買い込む使い方は、この「おおむね一定」から外れやすい。

架空計上・期ズレ・不要な支出は、決算前にやってはいけない

決算前には、次のような処理や支出が起きやすい。

  • 架空計上:実態のない外注費や経費を計上する。事実の仮装にあたり、重い加算税の対象になりうる
  • 期ズレ:今期の売上を翌期に回す、翌期の費用を今期に計上する。発覚すれば修正申告と加算税の対象になりうる
  • 不要な支出:必要のない物品の購入や、実態の乏しい出張・接待。損金になっても、会社のお金は減る

とくに期ズレは、意図していなくても起きる。納品が期末の前か後か、検収はいつか。決算前の数週間は、売上と費用の日付を一件ずつ確認したい。

社長個人のための支出を会社の経費にすることも、決算前に増えやすい。私的な支出は損金にならず、役員への給与とされることもある。

決算前に繰延型の商品を決めると、出口の年がないまま加入しやすい

決算前には、法人保険、オペレーティングリース、倒産防止共済の提案も集中する。これらは今期の損金を増やすが、将来お金が戻る年には益金になる。

決算までの時間が限られていると、「今期いくら減るか」だけで判断しがちだ。お金が戻る年に何と相殺するかを決めないまま加入すると、出口でほぼ同じ額の税金を払うことになりやすい。繰延型の仕組みと出口の考え方は、繰延型の節税商品のデメリットで詳しく整理している。

決算の3か月前から確認したい6つのこと

  1. 今期の着地見込みの利益と、納税額の見込み
  2. 来期も続く契約のうち、1年以内の前払いに切り替えて継続できるもの
  3. 従業員に決算賞与を出すか。出すなら、期末までに通知できるか
  4. 購入予定の設備のうち、期末までに事業の用に供せるもの(取得価額と特例の上限)
  5. 期末までに役務が完了し、未払計上できる費用
  6. 提案を受けている繰延型の商品について、お金が戻る年と受け皿

1がなければ、何をどこまでやるかが決まらない。決算の3か月前には、顧問税理士と着地見込みを共有しておきたい。

2〜5は、どれも期末の日付が条件に関わる。通知の日、事業の用に供した日、役務が完了した日。決算月に入ってからでは、日付の条件を満たす準備が間に合わないことがある。着地見込みが出た時点で、どの項目を使うかを顧問税理士と決めておくと、決算月の判断は確認作業で済む。

よくある疑問

Q. 決算前にできる節税で、すぐ効果が出るものはありますか?

短期前払費用、決算賞与、少額減価償却資産の特例、未払費用の計上は、条件を満たせば今期の損金になります。ただし、いずれも会社からお金が出ていく(または出ていくことが決まっている)支出です。来期以降も必要な支出かどうかで選んでください。

Q. 決算月に高額な設備を買えば、その分だけ利益を減らせますか?

通常の減価償却資産は耐用年数に応じて償却するため、決算月に取得して使い始めても、今期に損金になるのは使い始めてからの月数に応じた償却費が中心です。全額を一度に損金にできるのは、少額減価償却資産の特例などの要件を満たす場合に限られます。

Q. 社長に決算賞与を出して、利益を減らせますか?

役員への賞与は、事前確定届出給与として届け出た内容どおりに支給するなど、一定の要件を満たさない限り損金になりません。決算直前に決めて支給する役員賞与は、通常この要件を満たしません。社長の手取りの考え方は、社長の手取りを増やす方法で整理しています。

「今期いくら減るか」から「会社にいくら残るか」へ

決算前は、利益を減らす方法を探す時間になりやすい。

しかし、損金になる支出の多くは、税金より大きな額のお金を会社から出していく。残るお金が増えるのは、いずれ必要な支出を今期に寄せる場合か、出口まで設計された繰延に限られる。

いま検討している決算前の支出は、来期に同じ状況でも払うものだろうか。その問いに答えられるものから、条件を確認していけばよい。