決算の数か月前になると、航空機や船舶のオペレーティングリースの案内が届く。「出資した年に大きな損失を取り込めるので、今期の利益を圧縮できる」という説明が多い。

数字だけを見ると、保険や共済よりも一度に大きく利益を減らせるように見える。

ただ、オペレーティングリースで出資者に分配されるのは、損失に限らない。前半に損失が出る案件は、後半に利益が出て、最後に機体や船舶の売却益が出る。損失と利益は、ひとつの事業の前半と後半にあたる。

しかも、後半に戻ってくる金額は、為替・中古市場の相場・借り手の経営状況によって動く。保険の解約返戻金のように、契約時に示された表のとおりに戻るものではない。

この記事では、オペレーティングリース(匿名組合方式)の仕組み、損失と利益が出る順番、出資額を超える損失の扱い、3つのリスク、出口の準備を順に整理する。見てほしいのは初年度の損失額ではなく、事業期間を通して、いくらの利益がどの年に戻ってくるかである。

この記事が役に立つ方

  • オペレーティングリースの提案を受け、仕組みとリスクを理解してから判断したい
  • 初年度の損失額は聞いたが、後半の利益や売却益の説明を受けていない
  • すでに出資していて、利益や売却益が分配される年の準備をしていない

オペレーティングリースとは、匿名組合を通じて機体の賃貸事業に出資する仕組みだ

中小企業向けに提案されるオペレーティングリースの多くは、匿名組合方式をとる。流れはおおむね次のとおりだ。

  1. 営業者(リース事業を行う会社)が、投資家から匿名組合の出資を集める
  2. 営業者は、出資金と金融機関からの借入れで航空機・船舶・コンテナなどを購入する
  3. 購入した機体を、航空会社や海運会社に一定期間貸し出し、リース料を受け取る
  4. リース期間が終わると、機体を売却して事業を終える

匿名組合は商法に定めのある契約で、出資者が営業者の営業のために出資し、その営業から生じる利益の分配を受ける。出資したお金は営業者の財産になり、出資者は業務の執行に関与できない(商法535条・536条)。出資者から見ると、機体を持つのではなく、機体を使った事業の損益の分配を受ける立場になる。

法人が匿名組合員である場合、事業の利益や損失は、実際に現金を受け取ったかどうかにかかわらず、契約で分配を受けるべき金額を、その計算期間の末日が属する事業年度の益金または損金に計上する取扱いになっている(法人税基本通達14-1-3)。

前半に損失が出るのは、減価償却と利息が収入を上回るからだ

購入したばかりの機体は、減価償却費が大きい。定率法のように初期に費用が厚くなる方法で償却すると、費用は後になるほど小さくなる。借入金の利息も、元本が多く残る初期ほど大きい。

一方、リース料収入は期間を通じておおむね一定であることが多い。そのため、前半は費用が収入を上回って損失になり、後半は費用が減って利益に転じるという形になりやすい。

ここで押さえたいのは、事業期間全体を通した損益は、減価償却のペースでは変わらないことだ。償却費は、機体の購入代金を期間に配分したものにすぎない。前半に費用を多く配れば、その分だけ後半の利益が大きくなる。

さらに、最後に機体を売却すると、その時点の帳簿価額と売却価格の差が売却益として分配される。償却が進んで帳簿価額が小さくなっているほど、売却益は大きく出る。

提案書で「損失は出資額の○%」と示されるのは、この前半部分だけを切り取った数字である。同じ提案書の中に、後半の利益の見込みがどの程度書かれているかを確かめておきたい。

出資額を超える損失は、その年の損金にできない

損失の分配には上限がある。租税特別措置法67条の12は、匿名組合契約を含む組合契約について、法人の出資者が一定の場合に該当するとき、分配された損失のうち、出資の価額を基礎に計算した金額(調整出資金額)を超える部分を、その年の損金に算入しないと定めている。

損金にできなかった部分は、翌期以後に同じ組合事業から利益が分配されたとき、その利益の範囲で損金に算入される(同条2項)。また、事業の形態や損失補てんの契約などからみて、実質的に欠損とならないと見込まれる場合には、分配された損失の全額が損金に算入されない。

提案書の損失見込みが出資額に近いほど、この上限に触れていないかを確認したい。どこまでが今期の損金になるかは、営業者の説明に加えて、顧問税理士にも契約書を見てもらうとよい。

後半の利益と売却益が、前半に減らした税金を戻していく

仮の数字で、事業期間全体の流れを確かめる。条件は次のとおり単純化する。

  • 仮に5,000万円を出資し、法人の実効税率は事業期間を通じて33%で変わらないとする
  • 1〜3年目に損失4,000万円(出資額の範囲内)、4〜9年目に利益1,500万円、最終年に売却益2,900万円が分配されるとする
  • 事業の終了時には、出資額に通算の利益400万円を加えた5,400万円が戻るとする
  • 為替、手数料、住民税均等割、資金の時間価値は考えない
時期分配される損益税金への影響(33%)
1〜3年目−4,000万円−1,320万円
4〜9年目+1,500万円+495万円
最終年(売却)+2,900万円+957万円
事業期間の合計+400万円+132万円

※仮の条件による単純計算です。実際の分配額・時期・税率は、案件の内容や会社の状況によって異なります。

入口では「1,320万円の税金が減る」と説明される。しかし事業期間を通すと、減った税金は後半に戻り、最終的には通算の利益400万円に対して132万円を払う形に落ち着く。入口で見えている効果の中身は、税金の支払いを数年から10年近く後ろにずらすことだ。

この計算で最も重いのは最終年である。売却益2,900万円がまとめて益金になり、その年だけで957万円の税負担が生じる。最終年に本業の利益も出ていれば、その税負担はそのまま上乗せされる。

反対に、最終年が役員退職金の支給などで大きな赤字になる年と重なれば、売却益はその赤字と相殺される。繰延型の商品に共通するこの考え方は、繰延型の節税商品のデメリットで詳しく整理している。

オペレーティングリースのリスクは、為替・中古価値・借り手の信用の3つ

上の計算は、事業が想定どおりに進んだ場合の数字だ。オペレーティングリースには、戻る金額そのものを動かす要因が3つある。

為替:外貨建ての案件は、円に戻すときの相場で手取りが変わる

航空機や船舶の取引は米ドル建てが多い。出資・分配・売却代金が外貨建ての案件では、出資時より円高の時点で円に換えると、円ベースの受取額は目減りする。

中古価値:最後の売却価格は、その時の市場で決まる

事業期間の終わりに機体を売る価格は、契約時には決まっていない。機種の需要、環境規制、景気、同じ型の中古機の供給量によって相場は動く。売却益は、分配される利益の中で最も大きく、最も読みにくい部分になりやすい。

借り手の信用:リース料が止まることがある

借り手の航空会社や海運会社の経営が悪化すると、リース料の支払いが滞ったり、契約が途中で終わったりすることがある。次の借り手が見つかるまで、収入は途切れる。

この3つの影響は、借入れの比率が高い案件ほど大きく出やすい。機体の購入代金の多くを借入れでまかなっている場合、売却価格が下がっても借入れの返済額は減らないため、下落分は出資者の取り分から先に削られる。出資額に対して機体の価格が何倍かも、リスクの大きさを測る材料になる。

加えて、途中で抜けにくい点も確認しておきたい。商法は、存続期間を定めた匿名組合契約の途中解除を、やむを得ない事由がある場合に限って認めている(商法540条)。また、契約が終わったときに返還されるのは、出資が損失で減っていれば、その残額である(同542条)。

出口の金額が読めないなら、受け皿は幅をもって準備する

保険の解約返戻金は、契約時に返戻率の表が示される。オペレーティングリースの売却益には、その表がない。そのため、出口の準備は一点ではなく、幅で考える必要がある。

前の計算と同じ条件で、最終年の状況だけを変えてみる。

ケース戻る金額通算の損益通算の税金税引後の増減
A 想定どおりに売却5,400万円+400万円+132万円+268万円
B 売却益が想定より1,000万円少ない4,400万円−600万円−198万円−402万円
C 想定どおりに売却し、最終年が別の要因で大きな赤字5,400万円+400万円−825万円+1,225万円

※仮の条件による単純計算です。Cは、最終年の売却益2,900万円がすべて同じ年の赤字と相殺され、1〜3年目の損失はすべて33%で損金になったと仮定しています。

Bでは、税金は通算で198万円少なくなっている。それでも、出資したお金は600万円減って戻ってくる。税金が減ったことは、会社のお金が増えたことを意味しない。

Cのように最終年に受け皿があれば、手残りは大きく変わる。ただし、売却の時期は市場の状況によって前後することがある。受け皿の年を一点に固定するのではなく、前後の年も含めて利益の見込みを確認しておきたい。

出資する前に、分配の見込みを年ごとに出してもらう

提案を受けたら、次の7つを確認する。

  1. 年ごとの損益分配の見込み。損失の年だけでなく、利益に転じる年と金額
  2. 最終年の売却益の見込みと、その前提となる売却価格
  3. 通貨と為替の前提。円高になった場合の受取額
  4. 調整出資金額を超える損失が出る見込みがあるか
  5. 借り手の信用状況と、リース料が止まった場合の取扱い
  6. 途中で資金が必要になったときの扱い(解除・譲渡の可否と条件)
  7. 利益と売却益が出る年に、自社の受け皿があるか

1〜3と5・6は営業者に、4は顧問税理士に、7は経営者自身が答える項目だ。7に答えが出ないまま出資すると、入口の損失額だけで判断したことになる。

すでに複数の繰延型の商品に入っている場合は、それぞれの出口の年を一枚の表に並べてみてほしい。保険の解約、共済の解約、リースの売却益が同じ数年に重なると、受け皿が足りなくなる。出資の可否は、単体の案件ではなく、会社全体の出口の予定表の中で判断するほうが見誤りにくい。

よくある疑問

Q. オペレーティングリースは元本割れすることがありますか?

あります。売却価格の下落、為替の変動、借り手の経営悪化などで事業期間を通した損益が赤字になれば、戻る金額は出資額を下回ります。商法上も、契約終了時に返還されるのは損失で減った後の残額とされています。元本が保証されたものではない前提で比べてください。

Q. 決算直前に出資しても、今期の損金にできますか?

分配される損益は、営業者の計算期間の末日が属する事業年度に計上するのが原則です(法人税基本通達14-1-3)。出資の時期と計算期間の区切りによっては、今期に取り込める損失が想定より小さくなることもあります。自社の決算期と営業者の計算期間の関係を、契約前に確認してください。

Q. オペレーティングリースと法人保険は、どちらが節税に向いていますか?

目的によって答えが変わります。税金の支払いを後ろにずらす性格は共通ですが、保険は解約返戻金の見込みが契約時に示され、リースは売却価格と為替で戻る金額が動きます。出口の金額をどこまで読めるか、出口の年に受け皿を用意できるかを並べて比べると、自社に合うほうが見えやすくなります。

「初年度にいくら落ちるか」から「最終年にいくら戻るか」へ

オペレーティングリースの提案書では、初年度の損失額が最も目立つ位置に書かれていることが多い。

しかし事業期間を通して見ると、その損失は後半の利益と売却益で戻っていく。手残りを決めるのは、最終年にいくら戻り、その年に何と相殺できるかだ。

手元の提案書に、最終年の売却益の見込みと、その前提となる為替と売却価格は書かれているだろうか。書かれていなければ、それが営業者に最初に聞く質問になる。