事業が軌道に乗り、資産が積み上がってくると、「財団をつくる」という話を耳にすることがある。奨学金を出したい、地域に何かを残したい。そうした思いと並んで、相続税や承継の話として持ち込まれることも少なくない。

最初に、この記事の立場をはっきりさせておく。財団は、財産を家族に残すための器ではない。財団に拠出・寄付した財産は、設立者や家族の財産ではなくなる。取り戻すことも、家族で分けることもできない。

税制上の特例はある。ただしそれは、財産が公益のために使われ続けることを条件にしたもので、条件を外れれば課税が戻ってくる。家族で運営する一般財団には、2018年度の改正で相続税が課される仕組みも入った。

この記事では、一般財団法人と公益財団法人の違い、寄付した財産にかかる税金と特例の条件、同族の財団への課税、2025年4月の公益法人制度改革を整理し、財団が向かない人の特徴まで並べる。なお、海外の財団やいわゆるプライベート財団は本記事では扱わない。

この記事が役に立つ方

  • 財団の設立を、相続や承継の選択肢の一つとして提案されたことがある
  • 奨学金や助成など、社会に何かを残す方法を具体的に考え始めている
  • 一般財団と公益財団の違いや、税金の扱いを一度整理しておきたい

財団に入れた財産は、設立者のものではなくなる

財団法人は、拠出された財産に法人格を与える仕組みだ。株式会社のように出資者が持分を持つ形ではない。

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(一般法人法)は、設立者に剰余金や残余財産の分配を受ける権利を与える定款の定めは効力を有しないとしている(153条3項2号)。また、評議員を理事や理事会が選任・解任する定款の定めも無効とされる(同項1号)。

財団の運営は、評議員・評議員会・理事・理事会・監事という機関で行う(170条)。設立者が理事長になることはできても、財産は財団のものとして、定款と機関のルールに沿って使われる。

ここが、資産管理会社との根本的な違いだ。資産管理会社なら、家族が株主として会社を持ち、配当や株式の相続で財産を引き継げる。財団には、家族が持つ「株」にあたるものがない。

一般財団法人は登記で設立でき、公益財団法人は行政庁の認定を受ける

日本の財団法人は、大きく2つの段階に分かれる。

  • 一般財団法人:定款を作り、設立者が財産を拠出し、主たる事務所の所在地で設立の登記をすることで成立する(一般法人法163条)。拠出財産の価額の合計は300万円を下回ってはならない(153条2項)
  • 公益財団法人:公益目的事業を行う一般財団法人が、行政庁の認定(公益認定)を受けたもの(公益認定法4条)

一般財団法人は、事業目的に制限がなく、設立の手続きも比較的簡単だ。ただし、2期連続で純資産額が300万円未満になると解散する定めがある(一般法人法202条2項)。

公益認定の基準は、公益認定法5条に並んでいる。主なものは次のとおりだ。

  • 公益目的事業を行うことを主たる目的とし、公益目的事業比率が50%以上と見込まれること
  • 理事や評議員などの関係者、特定の個人・団体に特別の利益を与えないこと
  • 各理事について、その理事と配偶者・三親等内の親族など特別利害関係にある理事の合計が理事総数の3分の1を超えないこと(監事も同様)
  • 他の団体の意思決定に関与できる株式などを保有しないこと(議決権の過半数を持たない場合を除く)
  • 公益認定の取消しや清算の際、残った財産を類似の公益法人や国・地方公共団体などに贈与・帰属させる旨を定款で定めること

最後の点は重い。公益認定を取り消されても、公益目的で取得した財産の残額は、1か月以内に他の公益法人などへ贈与することになる(5条20号)。財産が家族のもとに戻る道は用意されていない。

財団の税金は、公益財団か、一般財団のどの類型かで大きく違う

国税庁の整理では、法人税の扱いは次の3つに分かれる。

区分法人税法上の扱い課税される所得
公益財団法人公益法人等収益事業から生じた所得(公益目的事業は収益事業から除かれる)
一般財団法人(非営利型法人)公益法人等収益事業から生じた所得
一般財団法人(非営利型法人以外)普通法人全ての所得

※国税庁「一般社団法人・一般財団法人と法人税」による。非営利型法人に当たるかどうかは、定款の定めや理事の親族割合などの要件で判定されます。

一般財団法人で非営利型法人の要件を満たさなければ、株式会社と同じく全ての所得が課税対象になる。「財団なら税金が軽い」とは言えない。

個人が財産を寄付すると、値上がり益に所得税がかかるのが原則

財団を設立する、または既存の財団に寄付する場面で、個人の側に税金が生じることがある。

個人が土地・建物・株式などを法人に寄付すると、寄付した時の時価で譲渡したものとみなされ、値上がり益に所得税がかかる(所得税法59条)。国税庁の説明では、この「寄付」には法人を設立するための財産の提供も含まれる。現金ではなく自社株や不動産を財団に入れると、お金を受け取っていないのに譲渡所得の申告が必要になりうる。

公益法人等への寄付で、国税庁長官の承認を受けた場合には、この所得税を非課税とする特例がある(租税特別措置法40条)。要件は、寄付財産が寄付の日から2年以内に公益目的事業に直接使われること、寄付によって寄付者や親族の所得税・相続税・贈与税の負担を不当に減少させないことなどだ。承認の申請は、原則として寄付の日から4か月以内に行う。

そして、承認後に寄付財産が公益目的事業に使われなくなった場合などには、承認が取り消され、寄付者または財団に所得税が課される。特例は寄付の時点で終わる話ではなく、その後の運営にずっと付いてくる。

また、一般財団法人を含む持分の定めのない法人への財産の提供によって、親族などの相続税・贈与税の負担が不当に減少すると認められる場合は、その法人を個人とみなして贈与税や相続税が課されることがある(相続税法66条4項)。役員に占める親族の割合などが判定の材料になる。

相続財産を公益財団に寄付した場合の非課税には、期限と取消しがある

相続や遺贈で取得した財産を、相続税の申告期限までに公益財団法人などの特定の公益法人に寄付した場合、その財産を相続税の対象としない特例がある(租税特別措置法70条)。

国税庁の説明では、条件と例外は次のとおりだ。

  • 寄付先は、公益社団法人・公益財団法人、社会福祉法人、一定の学校法人などに限られ、寄付の時点で既に設立されているものでなければならない
  • 一般財団法人(公益認定を受けていないもの)は、この特例の寄付先に含まれていない
  • 寄付を受けた法人が2年以内に特定の公益法人に該当しなくなった場合や、財産を2年以内に公益目的の事業に使わない場合は、適用されない
  • 寄付者や親族が寄付先を利用して特別の利益を受けているなど、相続税や贈与税の負担を不当に減少させる結果となる場合も、適用されない

これは、相続した財産を社会に回すと決めた人のための制度だ。その財産が相続税の対象から外れるのは、家族の手を完全に離れるからであり、家族の手取りが増えるわけではない。

同族で運営する一般財団には、理事の死亡時に相続税がかかる

かつては、一般社団法人・一般財団法人に財産を移し、親族を理事にして運営を続ける方法が、相続税の対象から外れる手段として使われることがあった。これに対応したのが、2018年度(平成30年度)税制改正で設けられた「特定一般社団法人等」への課税だ(相続税法66条の2)。

国税庁の説明では、次のいずれかに当たる一般社団法人・一般財団法人(公益法人などを除く)の理事(理事でなくなってから5年以内の人を含む)が亡くなった場合、その法人に相続税が課される。

  • 相続開始の直前に、亡くなった理事の同族理事の数が理事総数の2分の1を超えていること
  • 相続開始前5年以内に、同族理事の割合が2分の1を超える期間の合計が3年以上であること

課税の対象になる金額は、法人の純資産額を、同族理事の数に1を加えた数で割った額だ。同族理事とは、亡くなった理事の配偶者や三親等内の親族などを指す。2018年4月1日より前に設立された法人は、2021年4月1日以後の死亡から適用される経過措置が設けられた。

家族で理事会を固めれば財団の中身を実質的に動かせる。その状態こそが、相続税の課税対象として扱われるようになった。

2025年4月の公益法人制度改革で、財務のルールと役員構成が変わった

内閣府の公益法人information によれば、2025年4月から改正公益認定法などが施行され、公益法人制度が変わった。内閣府の改正法の概要で示された主な変更点は次のとおりだ。

  • 収支相償原則を見直し、中期的な期間で収支の均衡を図る考え方を明確化
  • 将来の公益目的事業を充実させるための資金(公益充実資金)の積立てを規定
  • 「遊休財産」の名称を「使途不特定財産」に変更
  • 収益事業等の内容の変更を、認定事項から届出事項に見直し
  • 公益目的事業・収益事業等・法人運営の3区分経理を原則義務付け
  • 認定基準に、理事・監事間の特別利害関係の排除と、外部理事・外部監事の導入を追加

外部理事については、収益・費用の額が一定の基準(3,000万円)に達しない法人には例外がある(公益認定法5条15号ただし書、同法施行令7条)。

財務の運用は柔軟になった一方で、ガバナンスと透明性の要求は強まった。家族だけで意思決定する運営は、公益財団ではより難しくなっていると読むのが自然だ。

財団が向かない人と、検討前に書き出すこと

次のどれかに当てはまる場合は、財団以外の方法を優先して検討したほうがよい。

  • 財産を将来、子や孫に使わせたい、または戻せる形にしておきたい
  • 財団の事業内容(誰に、何を、何年続けるか)がまだ言葉になっていない
  • 理事会を家族中心で構成し、外部の人に意思決定を委ねるつもりがない
  • 寄付後も、財団の資金を自社の資金繰りや家族の生活に使う可能性がある
  • 事務局・会計・監査・行政庁への報告などの運営コストを、長期にわたって負担する体制がない

それでも検討を進めるなら、次の点を書き出してから専門家と話すと、論点が整理しやすい。

  1. 何のための財団か。事業内容、対象者、規模、続ける期間
  2. 何を入れるか。現金か、株式・不動産か。値上がり益はいくらか
  3. 誰が運営するか。理事・評議員・監事の候補と、親族の割合
  4. 家族に何を残すか。財団に入れない財産で、相続や承継が成り立つか

とくに4は、財団の検討と切り離せない。自社株を財団に入れる案であれば、後継者への株の承継や事業承継税制との関係、残る相続人との公平も含めて考える必要がある。

よくある疑問

Q. 財団を設立すれば、相続税対策になりますか?

財団に拠出・寄付した財産は、設立者や家族の財産ではなくなります。相続税の計算で家族の財産に含まれなくなるのは、その財産を手放した結果です。同族で運営する一般財団には理事の死亡時に相続税が課される仕組みがあり、寄付の際にも所得税や贈与税の論点があります。家族の手取りを増やす方法として財団を選ぶことは想定しにくい制度です。

Q. 一般財団法人の設立に必要な財産はいくらですか?

一般法人法では、設立者が拠出する財産の価額の合計は300万円を下回ってはならないとされています。また、2期連続で純資産額が300万円未満になると解散します。設立後の運営費用や、登記・会計・事務局の体制も含めて見積もる必要があります。

Q. 財団の理事長や理事に家族がなれますか?

なることはできます。ただし、公益財団法人では理事の親族等の割合を3分の1以下にする必要があり、2025年4月からは外部理事の要件も加わりました。一般財団法人でも、同族理事の割合が2分の1を超えると、理事の死亡時に法人に相続税が課されることがあります。

財団で残せるのは、財産ではなく事業である

財団を検討するとき、「相続税がいくら減るか」という問いから入ると、判断を誤りやすい。財団に入れた財産は家族の手を離れ、特例の条件を守れなければ課税が戻ってくる。

財団が残すのは、家族の財産ではなく、その財産で続けていく事業だ。奨学金、研究助成、地域の文化活動。その事業を、自分がいなくなった後も他人の手で続けてもらう覚悟があるかどうかが、最初の判断材料になる。

家族に残したいものと、社会に残したいもの。その線をどこに引くかを書き出せたとき、財団が選択肢に入るかどうかが見えてくる。お金の出口全体の考え方は、社長の手取りを増やす方法でも整理している。