公益財団法人に株式を寄付する話が出ると、たいてい「措置法40条の承認」という言葉がついてくる。株式の寄付では、現金の寄付にはない税金の問題があるからだ。

個人が株式を法人に寄付すると、寄付した時の時価で売ったものとみなされ、値上がり益に所得税がかかるのが原則だ。お金は1円も入ってこないのに、譲渡所得の税金だけが発生しうる。

租税特別措置法40条は、公益法人等への寄付について国税庁長官の承認を受けた場合に、この所得税を非課税とする特例だ。ただし承認には要件があり、承認の後に要件を外れると取り消され、寄付者または寄付を受けた法人に所得税が課される。

この記事では、一般特例と承認特例の要件、申請の期限と流れ、取消しの仕組みを国税庁の資料で確認したうえで、自社株を寄付する場合に中心になる配当と議決権の論点を整理する。承認は寄付の入口であり、判断の軸は「寄付の後も要件を守り続けられるか」にある。

この記事が役に立つ方

  • 自社株や上場株式を公益財団法人に寄付する案を検討している
  • 「措置法40条の承認を取れば税金はかからない」と説明を受けたが、条件を確かめたい
  • 自分や家族が役員を務める財団への寄付で、何に注意すべきかを知りたい

株式を寄付すると、値上がり益に所得税がかかるのが原則

所得税法59条は、個人が法人に財産を寄付(贈与・遺贈・法人設立のための財産の提供)した場合、寄付時の時価で譲渡があったものとみなすと定めている。国税庁のパンフレットでも、取得時から寄付時までの値上がり益に所得税が課されると説明されている。

たとえば創業時に少額で取得した自社株は、取得費が小さく、時価が大きい。そのまま寄付すると、時価と取得費の差が譲渡所得になる。非上場株式の時価をどう見るかは、所得税基本通達59-6に定めがあり、相続税評価額の考え方を基礎にしつつ一定の修正を加える形になっている。

この課税を非課税とするのが措置法40条の特例だ。国税庁のパンフレット「公益法人等に財産を寄附した場合における譲渡所得等の非課税の特例のあらまし」(令和8年4月・令和8年9月改訂)に、制度の全体がまとまっている。

措置法40条には「一般特例」と「承認特例」の2つがある

国税庁の資料では、非課税の制度は2つに分かれている。

項目一般特例承認特例
対象となる法人公益社団・公益財団法人、特定一般法人、社会福祉法人、学校法人、宗教法人、NPO法人など国立大学法人等、公益社団・公益財団法人、学校法人、社会福祉法人、認定NPO法人等
主な要件公益の増進に著しく寄与/2年以内に公益目的事業に直接供される/税負担の不当減少がない寄付者が法人の役員等・社員やその親族等でない/基金等で管理または不可欠特定財産/理事会等で決定
自動承認なしあり(申請から1か月、株式等は原則3か月)

※国税庁「公益法人等に財産を寄附した場合における譲渡所得等の非課税の特例のあらまし」による要約です。対象法人ごとに要件の一部が異なります。

承認特例の自動承認とは、申請から一定期間内に承認・不承認の決定がなければ承認があったものとみなす仕組みだ。特定国立大学法人等以外の承認特例対象法人への株式等の寄付では、この期間が3か月になる。

一般特例の要件は「公益への寄与」「2年以内の直接供用」「不当減少がないこと」

一般特例では、次の3つを全て満たす必要がある。

  1. 寄付が、教育・科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与すること
  2. 寄付財産が、寄付の日から2年を経過する日までに、寄付を受けた法人の公益目的事業の用に直接供され、または供される見込みであること
  3. 寄付により、寄付者の所得税、または寄付者の親族等の相続税・贈与税の負担を不当に減少させる結果とならないと認められること

3の判定基準として、国税庁の資料では次のような項目が挙げられている。

  • 運営組織が適正で、定款等に理事・監事・評議員のそれぞれについて、親族等の割合を3分の1以下とする旨の定めがあること
  • 寄付者、役員等、社員やその親族等に対し、施設の利用、金銭の貸付け、資産の譲渡、給与の支給、役員等の選任などで特別の利益を与えないこと
  • 解散した場合の残余財産が、国・地方公共団体または他の公益法人等に帰属する旨の定めがあること
  • 公益に反する事実がないこと
  • 寄付で株式を取得した場合、その法人が持つ同じ会社の株式が発行済株式総数の2分の1を超えないこと

最後の要件でいう株式は、議決権に制限のない株式に限らない(40条通達19の2)。議決権のない種類株式にしても、この割合の計算からは外れない。

承認特例は早いが、寄付者が役員や親族だと使えない

承認特例は、承認特例対象法人への寄付について、寄付財産を一定の方法で管理することなどを条件に、自動承認の仕組みを設けた制度だ。公益財団法人の場合、寄付財産を不可欠特定財産として定款に定めるか、所轄庁の証明を受けた一定の基金に組み入れて管理する必要がある。

ただし、承認特例には寄付者が寄付を受けた法人の役員等・社員、およびその親族等に該当しないことという要件がある。自分が理事長を務める財団や、家族が理事にいる財団に寄付する場合は、承認特例は使えず、一般特例で審査を受けることになる。

また、承認特例で承認を受けた寄付者は、寄付をした日の属する事業年度の終了の日から3か月以内に、寄付財産が基金に組み入れられたことなどを確認できる書類(基金明細書の写しなど)を税務署に提出しなければならない。期限までに出さなければ、承認が取り消されうる。

申請期限は、寄付の日から4か月以内が原則

国税庁の資料による申請の流れは次のとおりだ。

  • 提出するもの:「租税特別措置法第40条の規定による承認申請書」と添付書類(一般特例と承認特例で様式・書類が異なる)
  • 提出する人:原則として寄付者。遺贈の場合は、遺贈者の相続人と包括受遺者
  • 提出先:寄付者の所得税の納税地を所轄する税務署
  • 提出期限:寄付の日から4か月以内。その前に、寄付した年分の所得税の確定申告期限が来る場合は、その期限まで

たとえば12月に寄付すると、翌年3月の確定申告期限が4か月を待たずに到来するため、申請の期限はそちらになる。寄付の実行日を決める時点で、申請書類をそろえる日程も決まるということだ。

株式の寄付では、名義変更を示す書類(非上場株式なら株主名簿の写しなど)に加え、寄付後5年間の配当金の利用計画書、過去5年間の配当状況、発行会社の直近の事業報告書・決算書などの添付が求められている。書類の準備には、財団側と発行会社側の両方の協力が要る。

承認が取り消されると、寄付者または財団に所得税がかかる

承認を受けた後でも、一定の事実が生じると国税庁長官は承認を取り消すことができる。その場合、原則として取り消された日の属する年分の譲渡所得等として所得税が課される。課税される人は、取消しの理由によって分かれる。

主な取消しの理由課税される人
寄付財産が2年以内に公益目的事業に直接供されなかった寄付者
公益目的事業に直接供される前に、不当減少の要件に該当しなくなった寄付者
承認特例の確認書類を期限までに提出しなかった寄付者
寄付財産が公益目的事業に直接供されなくなった寄付を受けた法人
公益目的事業に供された後に、不当減少の要件に該当しなくなった寄付を受けた法人

※国税庁「公益法人等に財産を寄附した場合における『租税特別措置法第40条の規定による承認申請書』の記載のしかた」(令和8年9月)の記載を要約したものです。

「不当減少の要件に該当しなくなった」例として、国税庁の資料は、寄付者やその親族に正当な理由なく過大な給与を払う、施設を私的に使わせる、財産を無償や著しく低い価額で譲渡するといった行為を挙げている。「公益目的事業に直接供されなくなった」例には、寄付財産を売ってその代金を事業費として使い切った場合などがある。

寄付財産を売却して別の資産に買い換える場合に承認を継続できる特例もあるが、届出などの手続きが必要だ。寄付した株を財団が売る可能性があるなら、その時点で取消しの論点が生じる。

また、寄付によって親族等の相続税・贈与税の負担が不当に減少すると認められるときは、寄付を受けた法人に相続税や贈与税が課される(相続税法66条4項)。措置法40条の承認と並んで確認しておく必要がある。

自社株の寄付では、配当と議決権が要件の中心になる

株式は、土地や建物のようにそのまま事業に使うことができない。そこで40条通達13は、株式のように性質上直接使えない財産については、各年の配当金など、その財産から生じる果実の全部が公益目的事業に直接・継続して使われるかで判定してよいとしている。たとえば配当金を奨学金や研究助成金の原資として支給する形だ。

同じ通達の注記では、配当金などの果実が毎年定期的に生じない株式には、この扱いが適用されないとされている。無配の年がある自社株や、配当方針が決まっていない会社の株では、要件2を満たすかどうかが論点になる。

自社株を寄付すると、会社の側には次のような影響が出る。

  • 配当:財団の事業費を賄うため、毎年安定した配当を出し続ける必要がある。会社の資金は配当として外に出る
  • 議決権:国税庁の確認事項では、寄付者や親族が役員を務める会社の株式を受け入れた法人は、その株式の議決権行使に理事総数の3分の2以上の理事会承認を要する旨の定款の定めがあるかが確認される
  • 保有割合:40条の一般特例では発行済株式総数の2分の1以下。公益財団法人は、公益認定法でも他の団体の議決権の過半数を持てない
  • 家族の持分:寄付した株は家族の財産ではなくなる。将来の配当や株価の上昇も、財団の事業に使われる

自社株を寄付すると、家族の議決権割合が下がる。後継者に株を集める計画や、事業承継税制の適用を考えている場合は、その設計と両立するかを確認する必要がある。相続税の納税資金との関係は、自社株の相続税が払えない問題の記事で扱っている。

自社株の寄付が向かないケース

次のような状況では、自社株の寄付は慎重に考えたほうがよい。

  • 配当を毎年安定して出す見通しが立たない、または内部留保を優先したい
  • 財団の理事会を家族中心で運営するつもりで、親族割合3分の1以下の体制をつくれない
  • 寄付後に、財団の資金や施設を寄付者・家族・自社のために使う可能性がある
  • 将来、財団が株を売らざるを得なくなる事態(資金不足、事業内容の変更など)が想定される
  • 後継者への株の集約や、事業承継税制の適用と両立させる設計ができていない

寄付は取り消しができない。税金の特例が使えるかどうかを確かめる前に、財団の事業と会社の配当方針が、10年、20年の単位で両立するかを確かめておきたい。会社から個人・外部へお金が出ていく経路全体の考え方は、社長の手取りを増やす方法で整理している。

よくある疑問

Q. 措置法40条の承認を受ければ、必ず非課税のままですか?

そうとは限りません。承認後に寄付財産が公益目的事業に使われなくなった場合や、寄付者・親族に特別の利益を与えた場合などには、承認が取り消され、寄付者または寄付を受けた法人に所得税が課されます。承認の時点だけでなく、その後の運営が要件を満たし続けることが前提です。

Q. 公益財団法人に株式を寄付すると、寄附金控除は受けられますか?

公益財団法人への寄付で、その法人の主たる目的である業務に関連するものは、所得税の寄附金控除の対象になる特定寄附金に含まれます。ただし、現物の寄付で措置法40条の承認を受けた場合の控除額の計算には特有の扱いがあるため、金額は税理士に確認してください。寄附金控除は、総所得金額等の40%などの上限があります。

Q. 相続した株式を公益財団法人に寄付する場合も、40条の承認が必要ですか?

相続税の申告期限までに公益財団法人などに寄付した場合、その財産を相続税の対象としない特例(措置法70条)があります。一方、寄付した相続人の側では、値上がり益に対する所得税(所得税法59条)の問題が別に生じうるため、40条の承認申請をあわせて検討します。遺言による遺贈の場合は、相続人と包括受遺者が承認申請を行います。

承認は入口。守り続けるのは寄付の後である

措置法40条の承認は、寄付の時点で生じる所得税の扱いを決める手続きだ。しかし、承認が続くかどうかは、寄付の後の運営で決まる。

自社株の寄付であれば、配当を出し続けられるか、議決権の行使を理事会のルールに委ねられるか、家族が財団から特別の利益を受けない体制を保てるか。この3つが、承認の要件であり、取消しの理由にもなる。

寄付を考えている株について、今後10年の配当計画と、財団の理事会の顔ぶれを書き出せるだろうか。それが書けたとき、40条の申請書類に何を書くべきかも見えてくる。